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サインデザインについて

架空鉄道におけるサインデザインの意義とは

一般の乗客が鉄道を利用する際に、一番目に入る機会が多いものは実は車両でもなければ時刻表でもなく、サイン類である。大まかな流れを見ると、乗客は駅の入口や関連施設を探すにあたり、駅名や路線名、社名が書かれたサインを目印にする。改札を抜けてプラットホームや目的地にたどり着くにあたっても、やはりそれらの場所や方角、案内表記などが示されたサイン類をガイドに進み、結果として目的地にたどり着いているのである。したがって、サインシステムの存在なくして乗客は鉄道を利用することすらままならないのである。

 

しかしながら、架空鉄道においては車両や路線図、ダイヤグラムといった「わかりやすい鉄道趣味」に重点が置かれている傾向にあると筆者は考える。鉄道趣味者としての観点から見た場合、「ぼくのかんがえたさいきょうのてつどう」を具現化するにあたっては、車両や路線図といった、趣味者が現実において趣味対象としているものを創作することによって、架空鉄道を表現する一つの手段になっているのではないかと考えられた。

この「ぼくのかんがえたさいきょうのてつどう」概念を私メロクリなりに解釈した場合、「駅サイン」をデザインすることであり、すなわちそれが架空鉄道を表現する一つの手段としてリアリティを高めることができると考えている。

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実際に制作したサインを写真にはめ込み合成した例。これだけでもリアリティが上がるのではないだろうか。

サインデザインコンセプトについて

サイン類は旅客に対して情報を伝達するという役割を持っている以上、それを念頭に置いた設計がなされるのは必然である。そこで以下に示す三点のコンセプトをもとに、わかりやすいサインを目指して設計を行っている。

 

  1. 明確 – 情報がクリアではっきりしていること

  2. 単純 – 情報が複雑でないこと

  3. 統合 – 個々のサインというミクロ的ではなく、全体的に見たマクロ的観点から設計されていること

 

サインシステムは位置や施設の情報を旅客に伝える必要性があることから、これらの点が念頭に置かれた設計が不可欠である。しかしながら、情報がはっきりしていなかったり複雑であったりする場合や、サインの連続性や統一性といった要素が担保されていない場合、旅客は判断に困り路頭に迷ってしまう。

そういった事態を避けるために、3つの基本コンセプトをもとに「クリアで、シンプルで、かつ体系化された」サインをデザインすることを目標としている。

表記ルール
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サイン類の表記に使用する書体は、これらのコンセプトを踏まえた上で使用するものを明確に制定している。

数字類は「Allumi Std」和文は「UD角ゴ_ラージ」欧文には「Stroudley」をそれぞれ用いることとしている。

また、ウェイトや平体、長体、文字詰めといった要素も状況に応じて調節することとしている。

 

ちなみに、Allumi Stdは東京BRTで、Stroudleyは香港の九廣鐵路(KCR)のサイン類でそれぞれ用いられていた実績があることから、公共交通機関のサイン類において一定の可読性があると判断されたため採用に至った。

使用する色彩については、十分な可読性を兼ね備えることができるよう、入場導線色(のりばに向かう導線を案内するサインで用いられる色)であるトラストブルー以外はJIS安全色に準拠した色彩を使用するものとしている。

また、入場導線色自体も他の色と組み合わせて使用する際は十分な可読性を確保できるよう、入場導線色が背景となる場合は文字やピクトグラムといった表記は白色に限定している。

 

このように、書体やカラースキームといった視覚的要素を細かく規定しシステム化することによって、不用意な色彩や書体の乱用を避けることが可能となり、見る者に対して一貫したイメージをもたらすことができる。​

サインデザインギャラリー

Coming soon...

おわりに

このページは晴凪様主宰の企画誌「妄想鉄路」第一号に掲載したコラム「架空鉄道におけるサインシステムとコーポレートアイデンティティ(CI)の意義」をもとに加筆修正を加えたものを掲載しています。

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